帯域通過フィルタ(BPF)
帯域通過フィルタ(Band-Pass Filter, BPF)は、特定の周波数帯域のみを通過させ、それ以外の周波数成分を遮断するフィルタです。
基本概念
BPFの特性:
- 通過域:
- 下側遮断周波数:
- 上側遮断周波数:
- 中心周波数:
- 帯域幅:
設計手法
1. LPFからの周波数変換
低域通過フィルタ(LPF)から帯域通過フィルタへの変換:
2. 直列接続による実現
- 高域通過フィルタ(HPF)と低域通過フィルタ(LPF)の直列接続
- の関係が必要
3. 共振回路による実現
RLC共振回路を利用した実現方法:
- 品質係数
- 高い 値により急峻な特性を実現
応用分野
通信システム
- 無線通信:特定周波数の信号抽出
- 変調解析:搬送波周辺の信号処理
- チャンネル分離:多重通信における信号分離
音響システム
- イコライザ:特定周波数帯域の調整
- 楽器音響:特定の音域の強調・抑制
- ノイズ除去:特定帯域のノイズ除去
計測・解析
- スペクトラム解析:特定周波数成分の分析
- 振動解析:機械の特定振動モードの検出
- 生体信号処理:脳波・心電図の周波数解析
設計パラメータ
品質係数(Q値)
- 高Q:急峻な特性、狭帯域
- 低Q:緩やかな特性、広帯域
設計仕様
- 中心周波数:通過させたい信号の周波数
- 帯域幅:許容する周波数範囲
- 通過域リップル:通過域での利得変動
- 阻止域減衰:不要信号の抑圧レベル
ディジタル実装
FIR型BPF
- 直線位相特性
- 安定性が保証
- 係数数が多い
IIR型BPF
- 少ない係数で急峻な特性
- 設計が比較的容易
- 安定性の確認が必要
まとめ
帯域通過フィルタは、特定の周波数帯域を選択的に処理する重要なツールです。通信、音響、計測など幅広い分野で応用されており、システムの要求仕様に応じた適切な設計手法の選択が重要です。
実用上の注意点
- 中心周波数とQ値の設定が性能を左右
- 実装方式(FIR/IIR)の選択は用途に依存
- 群遅延特性も重要な設計要素