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バリア法(Barrier Method)

バリア法(Barrier Method)

バリア法(Barrier Method)は,制約付き最適化問題の解法の一種で,内点法(Interior Point Method) に分類される.特に不等式制約のある最適化問題に対して有効である.バリア法は,許容領域の内点のみで評価関数が定義されるので,内点ペナルティ法(interior penalty method)または内点法(interior point method)ともいう.

1. 問題の定式化

一般的な制約付き最適化問題は以下の形式となる:

\[\text{minimize } f(x) \quad \text{subject to } g_i(x) \leq 0 \quad \text{for } i = 1, 2, \ldots, m\]
  • $f(x)$: 目的関数
  • $g_i(x)$: 不等式制約

バリア法の前提条件として許容領域の内点(interior point)が存在し,かつ内点全体$int\;S$の閉包(closure)が$S$に一致する.等式拘束条件が内点を持たないので,バリア法を適用できない.


2. バリア法の基本アイデア

バリア法は,制約条件 $g_i(x) \leq 0$ を ペナルティ関数(Barrier Function) に変換し,目的関数に追加して制約を満たす解を求める手法である.

バリア関数の定義

バリア法では,目的関数に ロジバリア関数(Logarithmic Barrier Function) を加える:

\[\phi(x) = -\sum_{i=1}^{m} \log (-g_i(x))\]

通常,以下の形式で補正された目的関数を解く:

\[\min_x \left[ f(x) + \frac{1}{t} \phi(x) \right]\]
  • $t$ は バリアパラメータ(Barrier Parameter) で,大きな値ほど制約境界に近づくことを許容する.
  • バリア関数は,制約境界 $g_i(x) = 0$ に近づくと無限大に発散するため,解は制約領域の内側に留まる.

3. よく使われるバリア関数

バリア関数として,以下の関数が一般的に使用されます:

a. ロジバリア関数(Logarithmic Barrier Function)

\[\phi(x) = -\sum_{i=1}^{m} \log (-g_i(x))\]
  • 制約境界に近づくと $\phi(x) \to \infty$ となる.
  • 内点法で最も広く使われる関数.

b. 逆べき乗バリア関数(Inverse Power Barrier Function)

\[\phi(x) = -\sum_{i=1}^{m} \frac{1}{g_i(x)^p} \quad \text{(通常は } p = 1 \text{ または } 2)\]
  • 制約違反を防ぐ強いペナルティを与える.

4. バリア法のアルゴリズム

Step 1: 初期化

  • 初期点 $x_0$ を制約領域の内部に選ぶ.
  • 初期バリアパラメータ $t > 0$ を設定する.
  • 許容誤差 $\epsilon$ を設定する.

Step 2: 近似問題の解決

解くべき補正問題:

\[\min_x f(x) + \frac{1}{t} \phi(x)\]
  • ニュートン法や勾配法を用いて解く.
  • 得られた解を $x^{\ast}(t)$ とする.

Step 3: バリアパラメータの更新

  • $t$ を増加させる(通常 $t \leftarrow \mu t$ で,$\mu > 1$).
  • 更新した $t$ で新しい補正問題を解く.

Step 4: 収束判定

  • 収束条件を満たすか確認:$\frac{m}{t} \leq \epsilon$ なら終了.(mは不等式制約の数)
  • そうでなければ,ステップ 2 に戻る.

5. まとめ

メリット

  • 制約を厳密に守ることができる.
  • 収束速度が速く,精度の高い解が得られる.
  • 内点法の一部として,大規模問題にも適用可能.

デメリット

  • バリア関数は制約境界付近で非常に急激に変化するため,数値計算の精度が重要.
  • バリアパラメータ $t$ を適切に制御しないと,収束が遅くなる可能性がある.

参考文献

  • 大塚 敏之, 非線形最適制御入門(Introduction to Nonlinear Optimal Control),コロナ社, 2011.
  • Nocedal, J., & Wright, S. J. (2006). Numerical Optimization. Springer.
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